離してなんかやるかよ。



「よかったら直谷くんにもあげるよっ!」



あたしは手に持ってる小さな袋に入ったキャンディを1個取り出そうとする。




だけど…



「あ…」




袋に入ってた1個のキャンディちゃんは文化祭なのに人気のない廊下を転がっていく。




期間限定のキャンディちゃんっ!




待って!





そしてあたしは直谷くんを置いてキャンディを追いかけた。



そしてキャンディちゃんは階段から落ちる前に止まった。




はぁ…、止まった……。




このキャンディちゃん転がるのが好きなのかな―…?



味は違うけど颯の部屋にも転がってたし。





「颯あたしに好きって言って〜♡」





…その時階段の近くから声が聞こえた。




すごく甘ったるい声の女の子と、声が。





颯って今、聞こえた…。




好きって言ってっても聞こえた…。




甘いチョコレートみたいな香りが微かに、階段の近くに漂う。




それにこの香り颯の香り―…




もしかしたらこの甘ったるい声の女と話してる人って颯―…?





『颯好きって言って〜』




ふと脳裏によぎる言葉。



そして脳裏に颯のバイト先のハーフの先輩が颯に頬チューしてた記憶がよぎる。






颯は―…




あたしにうんざりしてあたしにもう恋愛感情はなくて



バイト先のハーフの先輩が好みなんでしょ?




なのに他のこんな甘ったるい声の女の子に“好きって言って”って言われて好きって言ったらあたしもう…




颯はやっぱりプレイボーイなんだねって思っちゃうよ―…



いや好きって言わなくてもプレイボーイなんだねって思うよ。



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