離してなんかやるかよ。


だけど…




見えちゃったんだ。



階段の下の隅っこで颯と女の子が抱擁してるの見えちゃったんだ。




…その時胸の奥がチクッと痛んで目から温かいものがこぼれ頬へと流れた―…。






あたしのことなんか颯はきっと好きにならない。





颯はプレイボーイだから、誰かを好きになったりしない―…




「…あ」




颯とあたしは不意に目が合って




あたしは完全に泣かれてるところを見られてしまった。





颯にこいつまだ俺のこと好きなのかよ…?って思われちゃったかも。





颯に続き女の子は颯に抱きつきながらあたしの方を向いて…





「白雪姫じゃんっ!すごい可愛いっ!って…泣いてる?」





そう言った―…




可愛くなんかない。



あたしは颯に好かれるほど可愛くない。




仮に可愛いならいっそ颯に好かれるぐらい可愛くなりたかったよ。



「柚來!」




颯に呼ばれた気がしたけど



あたしはいつの間にか




キャンディがさっき転がってた廊下を走ってて




颯とさっきの女の子のところを離れていた。


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