離してなんかやるかよ。
「えーっと。そのなあ」
お父さんはウエストバッグを漁る。
「うん」
「お!そうそう!」
お父さんはウエストバッグから探し物を見つけたのか声をあげながらあたしにその探し物を渡した。
「うん?なにこれ」
とあたしが言うのと同時に
お母さんがお父さんを呼ぶ。
「あなた!!遅れるわよ!」
「あー。わかった。ちょっと待って「行くわよ!」
そしてお父さんは待ってと言うけどお母さんがお父さんを強引に連れ出す。
ちょっと待ってはこっちの台詞なんだけど。
いやほんとにちょっと待って。
お父さん!
これなに?
「柚來。神崎さんの家で頑張ってね」
お母さんは無理やりお父さんを引っ張りながらそう言った。
へ?
お母さんはお父さんから手を離しニコッと笑ってあたしに手をふる。
お父さんは「痛いじゃないか~」と笑いながらあたしに
「神崎さんに迷惑かけるんじゃないぞー」
と言った。
「あーはい」
ってなにこれ?
お父さん!
ちょ!
なにこれ?
「ちょー。お父さん!」
あたしは叫んだ。
けど声は届かず。
お父さんたちは行ってしまった。