離してなんかやるかよ。

「わりぃ」


俺は手が触れたことを謝る。


そしたら柚來はううんと首を左右にふって俺の手から自分の手を離した。



柚來は電話に出ようとして、俺とたまたま手が触れた。



だけど柚來は俺と手を離した。




もっと触れていたかったなんて、名残惜しく感じた―…




「もしもし」



俺は電話に出る。



『もしもしお母さんよ!颯?』



「あぁ…」


『え〜、颯なの。柚來ちゃんに変わって〜!!お願イタリアン♡』



電話の相手は母さん。


お願イタリアンって母さん…テンションおかしい。


こりゃ完全に飲んで酔ってるな…。




まぁとりあえず母さんの言う通り俺は柚來に受話器を渡した。



「ええっ!?いやいやいや!そんなっ!そんなそんなそんな〜!」



母さん並みにじゃねぇけど柚來もまぁまぁテンションおかしいんだけど?



なにそんなテンション高まることあったのかよ?



「いやそんな協力なんてっ!!…ってありゃ?切れてる!?え、ちょっと待って〜!」



そして柚來はそう言って受話器を一瞬みて受話器を置いた。



協力ってなに?


それに柚來テンション高いけどまじでどうしたの?




「なーんかママさん仕事が長引くらしいよ。で、今日帰れないとか…」



すげぇ棒読みなんだけど?


すげぇ嘘ぽっ…



母さん仕事が長引くとか言ってるみてぇだけど母さん酒飲んで酔ってたよね?



なのに仕事で長引くとか仕事中に、酒飲んでたってこと?


そんなこと有り得ねぇだろ…




それに柚來、母さんが仕事が長引いて帰って来ねぇからテンション高まるとか可笑しいよね?



っていやいや…待てよ!



柚來母さんが今日帰って来ねぇからそれでテンション上がってんの?



母さん帰って来ねぇとなると…



俺と二人きりになるから。



ってなに自惚れてるんだよ、俺!



だけど協力って柚來言ってたし



まさか母さん俺と柚來が最近不仲だったから心配して仲直りしようとしてんじゃねぇの?



「なぁ柚來ホントに母さん仕事で遅くなるんだよね?」



「え?なに言ってるの!?ほんとだよ〜」



またもや棒読みだし。



こいつ図星だな。



母さんやっぱ仕事長引くとか嘘だな、ぜってぇ今飲んでるし。




「お前素直になれよ」



「…え!なに言ってるの?」



「なにってお前嘘ついてんだろ?母さん今仕事してないよね?」



そう言うと柚來は、後ずさりして俺は柚來につれて柚來に迫る。



そして柚來は棚と背中合わせになってしまった―…



柚來はすげぇ頬が赤く染まってて生クリームの香りがした。


やっぱり生クリームの香りは俺の心をくすぐるんだ―…



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