離してなんかやるかよ。

二人きり…。



颯はあたしと二人きりって意識してるんだ。



もうすごい胸がドキドキするよ―…



｢する？｣


｢なにを？｣


颯はあたしの顎をクイッとあげる。



これ巷で言う顎クイッってやつですよね！？



そして颯はあたしに顔を寄せた。



え、まさかするって…




キス！？




颯さん颯さん。



あたし颯さんがプレイボーイってわかってる。



遊ばれてキスされるってわかってる。



本当はキスしたい。


だけどあたし、やっぱり軽いノリでキスとかしたくない。



颯にも軽いノリでキスしてほしくない。




そう思ってるのに本当はキスしたいゆえに目を閉じてしまうあたし。



…この正直者め。





だけどなんだろう。



唇じゃなくて今髪の毛の方になんか触れた気がするんだけど。




それで目を開けると…




颯は巷で言う顎クイッをやめて巷で言う壁ドンというものに変動していた。



しかもキスもしてない。



｢何目つぶってんの？キスするとでも思ったんだ？｣




あれ？



やられた？


あたし颯の罠に引っかかんたんだ！


この颯の性悪チャラ男！！



｢…むっ｣




あたしは頬を膨らます。



｢なに期待してたんだよ？髪に糸くずついてたからとっただけだけど？｣


別に何も期待してません。



いいえ、本当はキス期待してましたけど。



そんなこと言えるわけない。