離してなんかやるかよ。

「そりゃあNYだね」


「「「「「激しく同意」」」」」



「なんかデジャブ感…」


あたしがNYって言うと班員皆が賛成。



そして颯が何か言ってた。



先生は「この班は班長うるさいくせにまとまってんな」なんてちゃっかりあたしを貶して褒め言葉を発してた。


にしても上海とかシンガポールとかNYとかハワイとか海外ばっかりだな。


すごいな。

それにNYはお母さんとお父さんがいるんだよね。



そしてシューノンもいるんだよね。



「あたしニューヨーカーに生まれたかった」


「それな。わかる、でも柚來の両親は今NYいるよね」



三希さんと翼がなにやら語ってるとあたしに話が回ってきた。



「うん!だから修学旅行行ったら会いたい!修学旅行直前に電話しとく!」



電話費かかるけど。


それは気にしない。



「「「すげぇ」」」


三希さんと颯と松本くんが驚いてるけど、ぶっちゃけ颯があたしの親がNYにいることを知らないのにあたしは吃驚。



「大したことないよ。普通のデザイナーだもん」


「いやいやいや柚來のお母さんはすごい。お父さんもすごいよ」



「全然普通だよ」



「「まだ父さんいるだけでいいよね」」


え…。


三希さん?


颯?




颯は顔色を青くしてしんみりした様子だった。


あたしの知らない颯の顔。



文化祭2日目、颯が保健室で寝たとき「父さん」って寝言で言ってた。



確かに颯にはお母さんはいるけどお父さんはいない。



あたしのお父さんが言ってた、颯の家族はシングルマザーで母親ひとりで颯を育ててきたって。



まだあたしは颯の何も知らない。


誕生日も血液型も


そして過去も…。



今颯があたしといて幸せなら


それでいいって思ってた。



だけど颯は本当は寂しいのかもしれない。



颯はお父さんがいなくて寂しいんだ。



颯の過去は知らないで


颯のお父さんに何があったのかは知らないでいいって思ってた。



だけど教えてほしいって知りたいって思うんだ。




余計なお世話だと思うけどあたしに颯が少しでもお父さんの事を教えてくれたら颯は少しだけ楽になれるんじゃないかな?



寂しいって気持ちを半分こにしようよ。



「あたしにも…「あたし帰るわ、柚來ちゃんじゃあまたね」




「俺も帰るわ」



三希さんと颯はLHR中なのに帰るって言った。



三希さんも父さんいるだけでいいよねって言った。



颯と三希さんは同じ境遇の人なの?


「…三希さんっ!颯!」



教えて。



2人にしかわからない過去を気持ちを教えて!



あたしにもわかるように教えて。




「三希でいいから」



そう言って三希さんは颯と教室を出ていった。


先生は修学旅行の話をクラスメイトとしていて帰った颯と三希には気付かなかった。


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