離してなんかやるかよ。
「…あ、あの」
颯がお父さんがいなくて寂しい辛いって思ってるのは伝わる。
お父さんのこと…
颯の家族のこと…あたしにも教えてくれないかな?
そう言いたいのに颯の切なそうな顔が頭から離れなくてやっぱりあたしが知っちゃいけない事なのかな、なんて思っちゃって口が動かない。
「…NY楽しみだな」
颯はニコッて笑ってるけど本物の笑顔じゃない。
これは作った笑顔。
「…両親に電話しないとね。NY修学旅行で行くって」
ってあたしなに言ってるんだろう…。
颯がお父さんのことで苦しんでるのにあたしなに両親に電話するとか言ってるの?
あたしホント馬鹿なの?
「…両親とNYで会えたら最高だよな」
颯―…
なんでそんな作り笑顔するの?
本当はすごく辛いのにそんな無理して笑わないでよ。
「あ、そう言えば誰か来てるの?「柚來ちゃんっ!神崎くん!」
「保健室の先生…?」
なんでいるんですか〜!?
「ふーん。NY行くんだ、私達の学校は確かに選択肢が幾つかあってその中から選択して修学旅行に行く感じだもんね。それに私も修学旅行は着いていくよ、多分柚來ちゃん達と一緒に」
保健室の先生は神崎ママと友達ってこと覚えてますか?
神崎ママがさっきまでいたんだけどお酒とショートケーキを買いに行ったらしくそれでお留守番を頼まれたとか。
それで今保健室の先生と颯とリビングで語ってます。
それにしても先生が生徒の家で女子会ですか、しかも神崎ママまたもや他人に留守番頼むんですか。
「NY楽しみですね!」
保健室の先生も一緒に行くんだ〜!
なんかハチャメチャになりそうだな。
その時、神崎ママが帰宅。
「苺のショートケーキだ!美味しそう!」
神崎ママは苺のショートケーキをお皿に置いてお酒をワイングラスにいれて机に置いた。
「食べていいよ、柚來ちゃんも」
「俺はいらねぇ」
ええ!?
颯がショートケーキ食べないなんて珍しい。
明日やりが降るんじゃないの?
ってそうじゃなくて!
大好きなショートケーキを食べないほど元気なくて辛いんだ。