離してなんかやるかよ。
「あー俺らの泊まるホテル。多分いま皆、風呂。つーかすげぇ夜景キレイ」
え、さっき昼時だったよね!?
あたしそんなに寝てたの!?
ってことはシューノン相当レコーディング長いこと抜け出してたよね……。
もう夜なんだ……。
時間が経過するのは早い……。
「やばいな。超きれい」
「だね」
なんか感極まるな。
シューノンにあってサインを持って
好きな人と尋常じゃないくらい綺麗な夜景を見れるなんて……
ほんとドラマ並にロマンチックで幸せな時間。
「…お前に言いたいことあるんだけど」
別れよう―…
じゃないよね。
あたしがシューノンといる間、颯は三希ちゃんと結ばれたなんてないよね。
「…お前がシューノンといたの俺見つけてシューノンにお前がサイン貰って思った。俺の父さんな…」
颯のお父さんの話…。
そして颯はあたしに語った。
颯はすごく辛くて言いたくてもなかなか言えなくてようやく勇気を出して話してくれた。
男泣きしてすごく切なそうな顔で…
颯は家族が大好きでお父さんもお母さんも仲良くて…
だけどお父さんが死ぬ前お母さんとお父さんは喧嘩をしてた。
喧嘩の内容は些細なこと。
夜遅かったから不倫してるんじゃないかって不安になったらしい。
ほんとあるあるっていうかそれで離婚危機になる人って多いらしいけど……
颯のお父さんとお母さんはなんとか仲直りしたけど仲直りしたあとお父さんはすぐに亡くなった。
交通事故で……
颯のお母さんは喧嘩なんかしなかったらこんなことならなかったのかなって颯に言ってた。
仲直りしただろ?父さんは不意の事故にあったんだよ。
颯はそうお母さんに言ったけれどお母さんはまだ根に持ってて
お母さんはそれで父さんの仕事場を片付けたくないって。
あの颯の家にあった部屋はお父さんの仕事場―…?
颯のお父さんは颯の働いてた店の店長。
シューノンのサインをもらった、あの店長―…。
颯はお父さんの分までお母さんを幸せにしたくて今まで頑張ってきた。
お母さんはそれですごく元気だとあたしは思うけど…
しょっちゅうお母さんはお父さんの墓参りに行って泣いてる。
たまに夜もお父さんの仕事場の部屋で泣いてる。
俺は母さんを幸せにしたい。
颯はあたしに全部語ってくれた。