離してなんかやるかよ。
「ほらほら神崎くん。寝言はいいから早く起きて帰るんだよ!じゃなきゃ学校閉まっちゃうよ」
そうあたしは言ってリュックを背負って教室を出た。
『俺のこと好きになったの?』
そんなはずない。
だけど昨日、あの音楽室でのキス嫌じゃなかった。
初めてで怖かったけど嫌じゃなかった。
それに手をうっかり握ってしまった時も嫌じゃなかった。
それに手を離したとき心のどこかが少し苦しかった。
キュン…
頭の中に神崎の笑顔がフラッシュバックする。
そして胸が高鳴るんだ。
「好きじゃないもん…あんな奴」
教室を出た廊下でひとりあたしはつぶやく。
好きじゃないのに
胸の鼓動がなりやまない。
「宇佐美さん!」
近くから声がする。
だけどあたしにはその声は届かない。
制服についた微かな甘い香り。
神崎の香水の香り。
神崎に出会った時、あたしはヘッドホンを取られた。
あたしはカバンに入ってるヘッドホンを取り出す。
あたしの頭の中にうつるのは神崎。
なんでだろう。
神崎のことばっかりさっきから考えてるあたし。
考えてるだけで胸がドキドキするんだ。
これは…?
なんだろう。
このドキドキはなんなんだろう?