離してなんかやるかよ。


「ほらほら神崎くん。寝言はいいから早く起きて帰るんだよ!じゃなきゃ学校閉まっちゃうよ」


そうあたしは言ってリュックを背負って教室を出た。



『俺のこと好きになったの?』



そんなはずない。



だけど昨日、あの音楽室でのキス嫌じゃなかった。


初めてで怖かったけど嫌じゃなかった。



それに手をうっかり握ってしまった時も嫌じゃなかった。



それに手を離したとき心のどこかが少し苦しかった。



キュン…



頭の中に神崎の笑顔がフラッシュバックする。



そして胸が高鳴るんだ。



「好きじゃないもん…あんな奴」


教室を出た廊下でひとりあたしはつぶやく。


好きじゃないのに


胸の鼓動がなりやまない。



「宇佐美さん!」



近くから声がする。


だけどあたしにはその声は届かない。



制服についた微かな甘い香り。


神崎の香水の香り。



神崎に出会った時、あたしはヘッドホンを取られた。


あたしはカバンに入ってるヘッドホンを取り出す。



あたしの頭の中にうつるのは神崎。


なんでだろう。


神崎のことばっかりさっきから考えてるあたし。



考えてるだけで胸がドキドキするんだ。



これは…?


なんだろう。


このドキドキはなんなんだろう?


< 97 / 373 >

この作品をシェア

pagetop