コドモ以上、オトナ未満。
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小雨降る屋上で
――高校二年の六月。
梅雨の寒さのせいで風邪を引いたあたしが一日学校を休んだら、次の日、教室の黒板にとんでもないことが書いてあった。
【学園祭実行委員 真咲心矢・岩崎湖々】
登校するなりそれを見たあたしは、教室中を見渡して、クラスメイトたちを無言でじろりと睨みつけた。
……でも、あたしの味方になってくれる奴なんて一人もいない。
「こえーな、女王蜂」
「自分が一番偉いと思ってるんだよきっと」
女王蜂……
それはあたし、岩崎湖々(いわさきここ)が陰で呼ばれているあだ名だ。
女子にしては背が高くて、ちょっと吊り目で、協調性がなくて。
そのくせ上級生の男子からたまに告白されたりするのが、クラスメイトの癪にさわるらしい。
あたしは自分の席まで行くと、わざと大きな音を立ててスクールバッグを机に置き、その上に突っ伏した。
するとクラスメイト達はまたコソコソと、あたしの悪口を言い始める。
うるさ……でも、こんな騒音には慣れっこ。
勝手に実行委員にされた文句は、あとで担任に言うことにしよう。
だって、男子の方――真咲心矢(まさきしんや)だって、実行委員は不本意なはず。
だいたい、仕事で欠席がちな真咲を実行委員にするなんて、どうかしてるし。
四月のクラス替えから今まで、わりと話のわかる担任だと思ってたけど、そうでもないみたい。
そこまで考えてイラ立った気持ちをどうにかするため、あたしは一限の数学をサボることに決めて席を立った。