コドモ以上、オトナ未満。
テーブルの五千円札
結局、半ば無理やり押し付けられた真咲の教科書を使って、地理の授業はブナンにこなしたあたし。
真咲の方はどうしていたんだろうと思って、休み時間に教科書を返すついでに聞いてみた。
「俺? いちおう化学の本開いてやってるふりしてたよ」
「化学? ……せめて社会科のどれかにすればいいのに。でも、特に注意されてなかったよね?」
「ああ……多分、俺って基本なにしても叱られないんだと思う。たとえば、校舎のガラス全部割ったりしても」
「なんで?」
あたしの問いかけに、真咲は曖昧に笑うだけで答えを教えてはくれず。
代わりにこんなことを言った。
「でもさ、恩田先生は別。さっきもさぼったこと怒ってくれたし」
「……怒られることが嬉しいの?」
「まーね」
……理解不能。
ま、別に真咲のことなんて理解したくもないんだけど。
用が済んだので自分の席に戻ろうとしたら、真咲がまたあたしを「ココ」と呼んだ。
「……なに」
「今日、お昼一緒に食べようよ。屋上のあそこで」
「やだ」
ぷい、と顔を背けて会話終了。
真咲のことは悪い奴じゃないとわかるけど、だからこそクラスのごたごたに巻き込みたくない。
実行委員を一緒にやるのはともかく、それ以外であたしと絡むのはやめた方がいい。
さっき本人が恩田先生に言ってたように、これから真面目に学校に来る気なら、なおさら――。