コドモ以上、オトナ未満。


放課後になると、真咲は宣言通り先に教室を出て行き、あたしはその背中が見えなくなるのと同時に、バッグから化粧ポーチを出した。

机の上に鏡を立てて、いつもは下ろしっぱなしの前髪を横に流してピンで留める。

これだけでも、ちょっと雰囲気柔らかくなった……かな?

それから色つきリップと、頬にはちょっとだけチークも乗せて。


こんなの、真咲に見られたら恥ずかしくてしょうがないけど、あたしだって好きな人のために可愛くなりたい。

真咲の隣に並ぶのに、ふさわしい女子になりたい。

……これが、恋ってやつのかな。



「――岩崎さん、もしかしてこれからデートですか?」



教室を出るときにすれ違った、担任の恩田先生。

あたしの前髪を指さして、「それ、かわいいです」なんて言うから、一体この人は何人の女子生徒を泣かせてるんだか……と思いつつ、あたしはハッキリ答えた。


「そうです。誕生日なんで」

「あ、そうでしたか。おめでとう。素敵な一日になるといいですね。真咲くんにもよろしく」


はいはい……って。相手までばれてるし。


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