コドモ以上、オトナ未満。


「ありがとうございます。……じゃ、先生さよーなら」

「はい、さようなら。それにしても真咲くんの影響はすごいなぁ。あの岩崎さんが僕にちゃんと挨拶してくれるようになるなんて」

「……先生、うるさい」


それはなんだか、かわいいと言われるよりもずっと恥ずかしかった。

ハタから見ても、あたしは真咲のおかげで変わってるようにみえるんだ。

先生に対して“うるさい”なんて失礼発言を残したことがちょっと悔やまれるけど、あたしはそのまま学校をあとにした。

目指すのは、京香さんのお店。


いったい、真咲はどんな風にお祝いしてくれるのかな。

プレゼントとか、用意してくれてるかな。

別に、欲しいものがあるわけじゃないんだけど……

真咲が“あたしのために選んだ何か”がもらえるのなら、すごく嬉しい。


こんなにワクワクした気持ちで誕生日が迎えられるのも、全部真咲のおかげ。

やっぱり、今日は頑張って素直になってみようかな――。


そんなことを考えていたせいか足取りも軽く、思っていたより早く到着した目的地。

扉を開ける前に、髪を手ぐしで整えて、プリーツスカートのひだが変な風になってないか確認してから、小さく「よし」と呟く。


そしてギイ、と木製の扉を押して、お店の中に足を踏み入れた、そのとき――――

あたしの頭の中は一瞬、真っ白になった。



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