コドモ以上、オトナ未満。
通っている私立高校は、家からそんなに遠くないので徒歩通学をしているあたし。
片道二十分の道のりを、イヤホンを耳に突っ込んで歩き、今日も一人で家に帰った。
「ただいまー……」
言いながら、薄暗い廊下の電気をぱちんと点けた。
……返事がないのは当たり前。
あたしは小学生のころ――両親が離婚して母親がこの家を出て行ってからずっと、かぎっ子なのだ。
とりあえずリビングダイニングに移動して、いつものようにダイニングテーブルの上を確認する。
そこには、あたしがいつも使っている水色のマグカップをおもし代わりに、一枚の五千円札が置かれていた。
「一食に五千円も使う女子高生がいるかっつーの……」
ぼそっと呟いて、冷蔵庫から水のペットボトルを取り出すと、お金はそのままにして二階の自室に向かった。
あのお金を置いて行ったのは、他でもないあたしの父親だ。
自分は仕事で遅くなるから、晩ごはんはあれを使って一人で済ませろって意味。
あの人は、家にいる時間が短い代わりにすぐお金を使ってあたしの機嫌を取ろうとするのだ。
それは食事に限ったことではなく――
「……もう、クローゼットパンパンなんですけど」
制服を脱ぎ捨てて、クローゼットから部屋着を取り出したあたしは、そこに詰め込まれた服、靴、バッグの数を見て、ため息をつく。