コドモ以上、オトナ未満。


『わかった! 今から行くからちょっと待ってて!』

「……部活は?」

『今、学園祭準備期間で活動はだいたい自由だから平気だよ。そうじゃなくてもココちゃん泣いてるのに放っておけないよ!』

「カナコ……」


それ以上はもう何も言えなくなって、「絶対そこを動かないでね!」と念を押すように電話を切ったカナコの言葉に従って、あたしはただベンチに座っていた。

学校からここまで、どれくらいあるだろう。

早くカナコの顔が見たい……

そうしなきゃ、いやでもさっきのシーン、思い出しちゃうから……

ぎゅっと目を閉じ、何も考えないようにと思えば思うほど、記憶の時間が勝手に巻き戻って、京香さんのお店の扉を開けるところを再生しようとする。

それを無理矢理振り切っても、涙だけは止まってくれなくて、腫れたまぶたを重く感じるようになった頃だった。



「――ココちゃん!」



きっと、全速力で駆けつけてくれたんだろう。

ほっぺたを赤くしてぜえぜえと息をするカナコが、公園の入り口の方からあたしのもとへ走ってきた。


「カナコ……」


何から説明すればいいんだろう。

あたしだって、まだ何が起こったのか飲みこめてないのに。

でもとにかく、あたしがさっきこの目で見たもの――

それだけは真実だから、ちゃんと話さなきゃ。


< 111 / 211 >

この作品をシェア

pagetop