コドモ以上、オトナ未満。
『わかった! 今から行くからちょっと待ってて!』
「……部活は?」
『今、学園祭準備期間で活動はだいたい自由だから平気だよ。そうじゃなくてもココちゃん泣いてるのに放っておけないよ!』
「カナコ……」
それ以上はもう何も言えなくなって、「絶対そこを動かないでね!」と念を押すように電話を切ったカナコの言葉に従って、あたしはただベンチに座っていた。
学校からここまで、どれくらいあるだろう。
早くカナコの顔が見たい……
そうしなきゃ、いやでもさっきのシーン、思い出しちゃうから……
ぎゅっと目を閉じ、何も考えないようにと思えば思うほど、記憶の時間が勝手に巻き戻って、京香さんのお店の扉を開けるところを再生しようとする。
それを無理矢理振り切っても、涙だけは止まってくれなくて、腫れたまぶたを重く感じるようになった頃だった。
「――ココちゃん!」
きっと、全速力で駆けつけてくれたんだろう。
ほっぺたを赤くしてぜえぜえと息をするカナコが、公園の入り口の方からあたしのもとへ走ってきた。
「カナコ……」
何から説明すればいいんだろう。
あたしだって、まだ何が起こったのか飲みこめてないのに。
でもとにかく、あたしがさっきこの目で見たもの――
それだけは真実だから、ちゃんと話さなきゃ。