コドモ以上、オトナ未満。




「……真咲くんが、そんなこと……」

「その相手……真咲の初恋の相手なんだ。だから、別に、不思議ってわけでも、ないんだけどさ……」


ただ、真咲の心が京香さんに戻っただけ。

ううん、むしろ、あたしのことは最初から好きじゃなかったのかも……


「そんなことないよ、不思議だよ。だって、お昼休みはあんなに……」

「……無理してたんじゃない? あたしにばれないように……」

「ココちゃん……」


……ダメだ。せっかくカナコに来てもらったのに、あたし、困らせるような発言ばっかりしてる。


「帰ろっかな……この顔、夜までになんとかしないとお父さん心配するし」

「おうちに、一人でいて、平気……?」

「うん。……来てくれてありがと。少しは、落ち着いた」


そう言っても、まだあたしのことが心配らしいカナコは、そのあと家まであたしを送ってくれた。

その間はほとんど無言だったけれど、自宅の前でカナコと別れるときに、あたしは意を決したように口を開いた。


「あのさ……カナコ」

「うん?」


考えても、胸が痛くなるだけ。

涙が止まらなくなるだけ。


「もしも、真咲からカナコに、何かいいわけするようなことがあった時には、こう言っといて」


……だったらあたしはいっそ、考えるのをやめるよ。


「アンタなんか、大っ嫌い――って」



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