コドモ以上、オトナ未満。


「……行かないで」


京香さんが俺の腕を両手でつかんだまま言う。


「……私、ココちゃんがお店に来るのわかってて、あなたに甘えたの」

「え……?」

「優しい心矢くんなら、抱きしめてくれるって、わかってたから」


……どういうことだ?

だって京香さんは、俺とココのこと、応援してくれてるんじゃ……


「心矢くん……大人って、あなたが思うよりズルい生き物なんだよ」

「……わざとやった、ってこと?」


なんで。そんなことして、誰が得するっていうんだよ。

眉根を寄せる俺に、京香さんは薄く笑って言う。



「ココちゃんとダメになったら、私のところに戻ってきてくれる……?」



……俺は、愕然とした。

京香さんを好きだったのは昔のことだけど、今でもよき姉のような存在として、信頼していたのに。

こんな卑怯な手、使うなんて……


「……無理だよ、京香さん」


つかまれていた腕をやんわりほどいて、俺は京香さんを見つめた。


「そんなの、お互いむなしくなるだけだし……俺、今はココのこと以外、考えられないから」


ゴメンナサイ、と言い残して、俺は京香さんの店をあとにした。


とにかくココを探して、それで謝らなきゃ。

こんなことで、ココを失いたくなんてない。


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