コドモ以上、オトナ未満。


「……ココに、なんか聞いたの? あれは誤解だし、俺もハメられたっつーか――」

『いいわけなんて、聞きたくない!』


いつも穏やかで、優しい印象のカナコちゃんなのに。

かなり怒っているのか、震える声で、俺にそう言った。


『ココちゃん、今まで誕生日はキライだったんだって話、聞いた……?』

「……? いや、聞いてないけど」

『ココちゃんちのお母さん、出て行ったのが誕生日の次の日だったんだって……だからそれからずっと、誕生日は憂鬱なものって、心にインプットされてたみたい』


……ココ、誕生日にそんな思い出があったのか。

でも、“されてた”――ってことは、今は違うのか?

俺が黙ったままでいると、カナコちゃんがその疑問に答えてくれた。


『……でも、そんなココちゃんが、今年は“わくわくしてる”って言ってたんだよ? それってきっと、今年は、隣に真咲くんがいるからなんだよ?』


俺の胸が、ずき、と痛んだ。

同時に頭に浮かんだのは、昼休みのココの様子。


俺が後ろから抱きついたら、耳まで赤くして照れてたあのときも。

ハートのご飯の弁当作ってって頼んだら、『それはヤダ』って、ツンとしていたあのときも。

俺と祝う、トクベツな日……

その時間が来るのを待って、ココは期待に胸を膨らませていたんだ。

なのに、俺は―――


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