コドモ以上、オトナ未満。
小さくて愛しい生き物
「――話、あるんだけど」
最悪の誕生日の翌日。
朝のホームルームが始まる前に、真咲があたしの席までやって来た。
「……どーぞ。今ここで話せば?」
「いや……ここじゃちょっと。つか時間もないし、昼休みとか」
……きっと昨日のことを話す気だ。
そんなの、改めて聞く気になれるわけがない。
あの時の痛みを思い出すなんて、もう勘弁だよ……
「……学祭の準備があんじゃん。ウチらの都合で昨日の放課後の作業ナシにしたんだから、今日からは真面目にやんないと」
「それはそうだけど……少しくらい」
「……もう先生来たよ。自分の席戻ったら?」
とりつく島もないあたしの態度に真咲は深くため息をつき、あたしの視界からいなくなった。
どんな顔をしていたのかは知らない。
目を見る勇気がなくて、真咲のシャツの襟ばっかり見ていたから。
「――起立。礼」
日直の号令を無視して、あたしは窓の外を眺めた。
空は、むかつくくらいに真っ青な快晴。
関係ないものにイライラするのは、学校生活が苦痛である証拠だ。
昨日の誕生日を境に、あたしはまた女王蜂に戻ってしまったみたい――――。