コドモ以上、オトナ未満。
「岩崎さん。今朝はどうして挨拶しなかったんですか?」
一限の授業のあとで、呼び出された職員室。
恩田先生はいつもの穏やかな調子を崩さず、あたしに聞いた。
「……別に。気が乗らなかっただけです」
恩田先生のことだ。きっとあたしの身に何か起こったことには察しがついてて、だからわざわざ呼び出したんだろう。
でも別に、真咲とのことは担任に報告するようなことじゃないし、正直、放っておいてほしい。
「……そうですか。では、別件なのですが」
「別件?」
……朝のこと、意外に深く聞いてこなかったのはほっとしたけど。
別件って、なに?
「大変個人的な話で申し訳ないのですが……今度、うちに晩ごはんを食べに来ませんか?」
「……は?」
先生の、うち……? なんであたしが?
「いや、うちの奥さんが、意外とミーハーでして。この間きみの出ていた雑誌を見せて、“僕の教え子なんだよ”って自慢したら、是非会いたいと言い出しまして……」
「……ってことは。それって真咲も一緒ですか?」
ミーハーなら、まぐれで雑誌に載ったあたしなんかより、本物のモデルである真咲の方にむしろ会いたいはず。
……だったらあたしはお断りだ。
「いえ。真咲くんは、その……ちょっとカッコよすぎるので、ご遠慮願おうかと」
ばつが悪そうに、苦笑する先生。
カッコよすぎるから遠慮って……意味わかんないんですけど。