コドモ以上、オトナ未満。
放課後の学祭の準備は、どんなにイヤでもあたしと真咲が中心にならなきゃいけない。
それでもなんとか必要最小限の会話だけで気まずい時間を切り抜け、それが終わると逃げるように学校をあとにする。
帰り道は一人か、カナコが一緒の時もあるけど、事情を知ってる彼女は真咲の話を避けてくれるので、その時間は唯一心穏やかだった。
「へえ~。いいなぁ、先生の奥さん見れるんだ!」
「絶対に美人だよね。それで、家事も育児もきっと完璧で」
「育児……そっか。じゃあココちゃん、赤ちゃんにも会えるんだね」
「そうだね。……あたし、絶対泣かれそうだけど」
あはは、と笑うカナコに笑みを返しつつ、赤ちゃんという生き物に会うのはちょっと緊張するなと思っていた。
あたしには兄弟がいないし、自分より年下のイトコとかもいない。
出かけた先で小さな子が泣いてたり騒いでたりすると、正直“うるさいな”って感じることもある。
そういう“コドモが苦手オーラ”出してるあたしを見たら、赤ちゃんだって泣くんじゃないのかな。
もしも抱っことかすすめられたら、どうやって断ればいいかな……なんて。
あたしは当日までずっとそんなことを考え、頭を悩ませていた。