コドモ以上、オトナ未満。


それから一週間後に訪れたのは、学校から車で二十分くらい走ったところにある、広い庭のついた一軒家。

そこが、先生の家だった。


「……ああ、また枯れている。今日も百花(ももか)の機嫌が悪かったんでしょうか」


玄関先のプランターの中でしおれた花を見て、先生がつぶやいた。


「百花?」

「ああ、娘の名です。彼女はどうやら一般的な赤ん坊よりも泣いている時間が長いようで、千秋……僕の奥さんの趣味である園芸が、最近思うようにできてないみたいで」


園芸……ガーデニングか。花を育てるのが趣味だなんて、やっぱり先生の奥さんらしい。

……けれど、確かにこの辺の花、全部元気がない。



「――千秋、ただいま。岩崎さんが来てくれましたよ」



玄関の扉を開けて、先生が中に声を掛ける。

するとばたばた慌てたような足音がして、廊下の奥から先生の奥さんと思われる女性が、姿を現した。


「こんにちは、いらっしゃい。お客さんが来るって言うのにこんな格好でゴメンナサイ!」


……この人が。


「いえ……あの、おじゃまします」


あたしは挨拶しながら目をぱちくりさせて、目の前にいる先生の奥さんを眺めた。


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