コドモ以上、オトナ未満。
年は先生よりずいぶん若そうに見える。……身近な人で言えば、京香さんと近いような雰囲気かな。
でも、いつもキレイにメイクしていて大人の雰囲気をまとう京香さんと違って、すっぴんだし、黒ぶちメガネ掛けてるし、完全に部屋着っぽいラフな格好。
かろうじてエプロンはつけているけど、それがなければ今起きたのかなって思っちゃうような感じだし……
「……岩崎さん、どうかしましたか?」
「……いえ! どうもしてないです」
先生の声で我に返り、あたしはお父さんに持たされた手土産を千秋さんに渡した。
“奥さんがイメージと違った”――だなんて言ったら、失礼すぎるよね。
先に部屋の方へ向かう先生ご夫妻の後に続いて、あたしもローファーを脱いで廊下に上がる。
そしてリビングに入ると、ふぇぇ、と小さく泣く赤ちゃんの声が。
「ああ~……もう起きちゃったの?」
窓際に置いてある、優しい茶色のベビーベッド。
そこに駆け寄った千秋さんが、小さな体をひょいと抱き上げた。
「千秋、僕が抱いてますから、食事の支度を」
「ありがとう、秋人さん」
千秋さんの腕の中から先生の方へ移動した赤ちゃんは、一旦泣き止んでいたはずなのに、また泣き出した。
しかも、さっきより大きな声で。