コドモ以上、オトナ未満。


「百花は相変わらず僕がキライみたいですねえ……」


苦笑しながら先生が赤ちゃんをあやすも、全然泣きやむ気配がない。

……体は小さいクセに、すごい音量。

耳痛くなりそうなんだけど。

あたしがそんなことを思いながら、やっぱり子供は苦手だと再確認していたとき。

先生が、泣きわめく百花ちゃんを、ずいとあたしの方へ差し出す。


「岩崎さん、ちょっと抱いてみてください。たぶん、この子は女の人の方が好きなんです」

「えっ……」


……ハッキリ言って、いやだ。

っていうか、実の親である先生の抱っこでダメなのに、赤の他人のあたしが抱いて、泣きやむわけないじゃん……


「もう首はすわっていますから、多少荒っぽくても平気です」


にこっと微笑む先生。

泣き続ける百花ちゃん。

……これ、断ったら、あたし、鬼みたいだよね。


「……じゃあ、少しだけ」


先生の方に手を伸ばして、小さな体を受け取る。

それは思ったよりずっと柔らかくて、あったかくて、それからずっしりと重くて。


「――ほら、泣きやみました」


まだ涙は浮かべているものの、声を出して泣くのは止めた百花ちゃん。

この人、誰?って顔してあたしをじっと見る瞳は、まっすぐで、少しも曇りがなかった。


「……かわいい」


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