コドモ以上、オトナ未満。


こんなちっちゃいのに、あたしのこと、ちゃんと見てる。

自分の子供ってわけじゃないのに、こみあげるこの愛しさはなんだろう。


「岩崎さんにも、こういう時期があったんですよ?」


先生が言ったのは、ごく当たり前のこと。

誰だって、最初は赤ちゃんだもん。

でも、あたしはそれを、本当の意味でわかってなかった気がする。

自分が、こんなに小さかったこと。

こんなに無垢な瞳を持っていたこと。

……こんなに、愛しい存在であったこと。



「先生……あたし」



声を出したら思いのほか震えていて、目の奥も熱いと思ったら、あたしは泣いていた。


「子供が産まれたとき、みんなが“オメデトウ”って言う理由、今までわかんなかったんです……」


だから、あたしはあのとき先生に、素直にその言葉を言えなかったんだ。


「でも……今ならわかる。理由なんて、この子がただここにいてくれることだけでいいんだ。生まれてきてくれたことが、おめでたいんだって」

「岩崎さん……うん。きみのいう通りです」


あたしが生まれたとき、小さな体を抱っこしながら、あたしの両親もそう思ったはずだ。


……お母さんは、もういないけど。

だからって、あたしが生まれたことまで否定する必要はないんだよね。

あたしだって、胸張って生きていいんだよね……


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