コドモ以上、オトナ未満。


それから、千秋さんの手料理をみんなで食べて、色んな話をした。

千秋さんは、今は仕事をお休みしているけど、それまで保健室の先生をしていたらしい。

じゃあ職場恋愛なんですねって聞いたら、二人は目を合わせて首をひねり、「そうとも言いますね」とよくわからないことを言っていた。


“泣いている時間が長い”という言葉通り、すぐに機嫌の悪くなる百花ちゃんをかわりばんこで抱っこすると、先生の時だけ大泣きするのが面白くて、千秋さんと笑い合って。



「――じゃ、食器は僕が洗うので、それが終わるまでガールズトークとやらでも楽しんでいてください」



食事が終わると先生はキッチンに引っ込み、あたしはリビングで千秋さんと向き合った。

百花ちゃんはやっと大人しくなり、ベビーベッドで安らかな寝息を立てている。


「……岩崎、ココちゃん、だよね。雑誌、見たよ。すごく可愛かった」

「あ、ありがとうございます」

「私、今はおしゃれなんて全然する気になれなかったんだけど、もうちょっと頑張ってみようかなって思えたし」


そう言うと、テーブルの上に手を伸ばして、紅茶を飲もうとした千秋さん。

でも、湯気のせいでメガネが曇ってしまって、カップを置くとそれを外してティッシュで拭っていた。


「……あ」


メガネしてる時はわからなかったけど、千秋さんてすごく美人だ。

なんていうか、今のやる気のない服装とかがもったいないくらい、キレイな人。

それに気づいて思わず声を出してしまったあたしに、メガネをかけ直した千秋さんが首を傾げた。


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