コドモ以上、オトナ未満。
「あの……コンタクトにしないんですか?」
「……ああ! この眼鏡、やっぱり似合わないよね?」
「べ、別に、そういうわけじゃないんですけど……」
いいのいいの、私もそう思うよー、と微笑んでくれる千秋さん。
ちょっとわかりやすすぎたかな……でも、せっかくキレイなのに、メガネのせいでなんだかその魅力が半減しているような気がするんだもん。
「……もともとは視力よかったんだけど、妊娠中に本ばっかり読んでたら一気に落ちちゃって。最初はコンタクト着ける日もあったんだけど、子供中心の生活だとコッチの方が楽なんだよね。もう最近、自分のことは全部後回しだよ」
ちら、と百花ちゃんの眠るベッドの方を見てそう言った千秋さん。
その瞳はすごく優しくて、理想のお母さん像だな……と思うけど。
同時に、素朴な疑問も湧く。
「そういう、生活……投げ出したくなったりは、しないんですか?」
あたしが今日、百花ちゃんを“可愛い”と思えるのは、きっと短い時間しか接していないからであって。
あの泣きっぷりを毎日やられたら、千秋さんのように笑っていられない気がする。
「……たまには、あるよ。睡眠不足とかたまると、特に。でも、結局は可愛くて仕方ないって気持ちが勝つんだよね。……大好きな、先生との間にできた子だし」
「せん、せい……?」
あれ? さっきまでは、“秋人さん”って呼んでなかったっけ……
目をぱちくりさせる私に気付いた千秋さんは、ぱっと口元を手で押さえて慌てる。
「あ、あの、今の聞かなかったことにしてもらえるかな! つい、昔のクセで……」