コドモ以上、オトナ未満。
先生同士でも、“先生”って呼び方はするかもしれないけど。
千秋さんの動揺ぶりとそれから二人の年の差を見ると、今ふいに口から出ちゃった“先生”は、そっちじゃない気がする。
もしかして、二人は……
「千秋さんって、先生の元教え子……?」
「ほ、他のお友達には内緒にしてね。……実は、そうなの」
……やっぱり。でもまさか、あの恩田先生が、生徒と……だなんて。
びっくりして言葉を失うあたしに、千秋さんは照れくさそうに言う。
「その時期がすごくつらかったから、余計に今が幸せに感じるの。想いは通じてるのに、二年間離ればなれって言う期間もあったし」
「二年間……ずっと会えなかったんですか?」
「うん。秋人さん、海外に行っちゃってたから」
「それでも、二人ともずっとお互いを想ってた……」
「……なんか人に言われるとすっごい恥ずかしいね」
手のひらをパタパタさせて、少し赤くなった顔を冷ます千秋さん。
……最初は、“イメージと違う”なんて印象を抱いたけど、話してみればやっぱり素敵な人だ。
先生にお似合いの、素直で優しい人。
二年なんて長い間、ずっと相手を信じていられるなんて、すごいことだと思う。
ほんのささいなことで腹を立てて、会話すらまともに取り合おうとしないあたしとは大違い。
こんな可愛げのない女に、真咲はそろそろ嫌気がさしてる頃だろうか。
今日も学校にいる時、あたしに何か言おうとしては、飲みこんでいた真咲。
その姿を見て鈍く痛んだ胸が、またズキズキと疼き出した。