コドモ以上、オトナ未満。
「……壁画でいいんじゃね?」
「だねー。検便ヤダし」
ざわざわと盛り上がり始めた彼らを見て先生はふっと微笑むと、並んだ机の隙間を通って真咲の隣に移動してきた。
「ま、最初はそんな風に消極的でも構いません。でも、約束して欲しいのが、全員ひと筆は絶対に参加すること。
この部分は自分が塗ったんだって、覚えておくこと。そうして完成させた絵には、何か感じるものがあるはずです」
しん、と静まり返る教室。
同じ静けさなのに、さっき真咲が質問を投げかけたときとは明らかに違う。
こういう風に、クラスを黙らせる力のある恩田先生だから、あたしも一目置いてしまうのだ。
“何か感じるものがあるはず”
――そんなこと、どうして先生に断言できるの?って。
いつものあたしなら、そう思うところなのに。
なんだか自然と納得してしまった。