コドモ以上、オトナ未満。
カサカサとビニール袋を揺らして、すっかり日の暮れてしまった街を歩く。
学校から一番近いホームセンターには欲しい色のペンキがなくて、色々はしごしていたら思ったより時間がかかってしまった。
「もーみんな帰ったよね……」
どうせ誰も待っていないだろうと思うと急ぐ気もなくなり、のんびりと足を進める。
いつもは横断歩道を渡る交差点も、歩行者信号がちょうど赤になったばかりだったから、その上にある歩道橋を渡ることを選んだ。
久しぶりに上る階段は思ってたより数が多くて、やっぱり信号待てばよかったかも……と思いながら、頂上に着いた時。
あたしは異様な光景を目にして、どくん、と心臓が重い音を立てるのを聞いた。
手すりの下に、キレイに揃えられた一足の靴。
その真上で、女性が足をぶらぶらさせながら、歩道橋の外側を向いて座っている。
なにしようとしてんの……?
そんなとこ、アブナイから早く降りなよ……
心の中で語りかけても、その人に伝わるわけはなく。
その横顔に、つうっと涙が落ちて行くのを目にしたら、あたしの足は勝手に動いていた。
「ダメ――っ!」
あたしの声を聞いて、驚いたようにこちらを振り向いた女性。
その顔には見覚えがあって、正直、最近のあたしはその人に対してあまりいい感情は抱いていなかったけど。
……そんなこと、関係ない。
あたしは女性の体にがしっとしがみついて、彼女を無理矢理に下へ引きずりおろした。