コドモ以上、オトナ未満。


いつもお店で見るときは、キレイに後ろでまとめられた長い髪。

それが今は下ろされているだけでなく、顔を隠すように乱れている。

まるで、お化けみたいに。

……こんなの、あたしが知ってる彼女じゃない。そう思って、あたしは聞く。


「……京香さん……どうして、あんなこと……」

「ココ、ちゃん……」


一度そう言ったきり、唇を噛んで黙り込む京香さん。

けれどしばらくすると、垂れ下がる長い髪に手を差し込んで後ろにかき上げ、苦笑しながら言った。


「私のこと、助けてくれたってことは……仲直り、したんだね、心矢くんと」

「え……?」


……なにそれ。

今、そのこと、関係なくない?


「……別にしてませんけど。目の前で、あんなとこから飛び降りようとする人見たら、普通助けるでしょ?」


あたしはちょっと怒り気味に言った。

こっちは、あんな光景を目にしてまだ心臓ばくばく鳴ってるって言うのに、関係ない話しないでよ。


「そっか……そうだよね。そういうココちゃんだから、愛されるんだよね」

「京香さん、何言って――」

「私がこんなんだから……幸せは全部、腕をこぼれ落ちて行くんだよね……っ」


ひっく、と肩を揺らして、泣き始めてしまった京香さん。

どうしちゃったの、ホント……今日の京香さん。


自分よりオトナの人が泣いてる場合、どうやって慰めたらいいんだろう。

あたしはすごく悩んだけれど、手を伸ばして京香さんの肩に触れ、そこをゆっくりとさすった。


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