コドモ以上、オトナ未満。


ハタから見たら、かなり怪しい二人なんだと思う。

通り過ぎる人はみんなあたしたちをジロジロ見ていて、それに気づいた京香さんが、鼻を啜って立ち上がる。


「……ゴメン。私のせいで、注目の的だね」

「それは、別に構いませんけど……」

「歩きながら、話そっか」


あたしたちは歩道橋を降り、あたしが一度学校へ戻らなきゃいけないことを話すと、京香さんは「じゃあそこまで送る」と言ってくれた。

それから、彼女はぽつぽつと語り出す。


「……ココちゃんの誕生日をお祝いしたいから、あのお店をちょっと貸してって、心矢くんに頼まれたちょうどその日にね……私、病院から退院したところだったの」

「……退院? どこか、悪かったんですか?」

「ううん。私は、なんともなかったの。だけど……」


そこまで言うと、華奢な手を自分のお腹にそっと当てた京香さん。


「ここにいたはずの子がね? いつの間にか、死んでしまっていて……その子を、体の外に出す手術をしたの」


……京香さん、妊娠してたんだ。でも、それってどういうこと?

知らない間に、赤ちゃんが京香さんのお腹の中で死んじゃったって……

そんなことってあるの?

妊娠したらみんな、千秋さんみたいに元気な赤ちゃんを産んで、お母さんになるものだと思っていた。

何の疑いもなく、それが自然なことなんだって。


< 146 / 211 >

この作品をシェア

pagetop