コドモ以上、オトナ未満。
「――ココ、今日この後ひま?」
「……ヒマじゃない」
放課後の、がやがやうるさい教室で、またしてもあたしにつきまとうのは真咲だ。
だから、必要以上に話しかけないでってば……
「壁画のこと、少しは原案考えておこうよ」
真咲は、あたしが目を合わせないようにしてるのに、全然気にしてないみたい。
鈍いのか、わざとなのか……
なんとなく、真咲は後者な気がするけど。
「……まだ六月じゃん。学祭は十一月でしょ?」
「でも来月は試験あるし。夏休み入ったら話し合えないし。九月にはすぐ作業入らないと間に合わないって、恩田先生も言ってたよ?」
そう言って、あたしの顔色を窺うように身を屈めてきた真咲。
それを無視するように教室の扉から廊下に出ようとすると、突然手をぎゅ、と握られた感触が。
「ちょっ……! 何してんの!?」
あたしの手を掴むのは、紛れもなく真咲の大きな手。
「だって、ココが帰ろうとしてるから」
まだ教室に残っている、数人のクラスメイトたちの視線が痛い……!
明日は教科書濡らされるだけじゃ済まないかもしれない。
そんなことを考えて、頭が痛くなる。
「……離して」
「俺と話し合う気あるなら」
「わかった。わかったから……」
あたしがそう言うなり、ぱっと手を離した真咲。
話し合うのはいいけど、この教室で――っていうのだけは勘弁。
あたしは真咲の顔を睨んで、ぼそりと言った。
「どっか……外行こ。この学校の生徒と会わなくて済むトコ」