コドモ以上、オトナ未満。


「――ココ、今日この後ひま?」

「……ヒマじゃない」


放課後の、がやがやうるさい教室で、またしてもあたしにつきまとうのは真咲だ。

だから、必要以上に話しかけないでってば……


「壁画のこと、少しは原案考えておこうよ」


真咲は、あたしが目を合わせないようにしてるのに、全然気にしてないみたい。

鈍いのか、わざとなのか……
なんとなく、真咲は後者な気がするけど。


「……まだ六月じゃん。学祭は十一月でしょ?」

「でも来月は試験あるし。夏休み入ったら話し合えないし。九月にはすぐ作業入らないと間に合わないって、恩田先生も言ってたよ?」


そう言って、あたしの顔色を窺うように身を屈めてきた真咲。

それを無視するように教室の扉から廊下に出ようとすると、突然手をぎゅ、と握られた感触が。


「ちょっ……! 何してんの!?」


あたしの手を掴むのは、紛れもなく真咲の大きな手。


「だって、ココが帰ろうとしてるから」


まだ教室に残っている、数人のクラスメイトたちの視線が痛い……!

明日は教科書濡らされるだけじゃ済まないかもしれない。

そんなことを考えて、頭が痛くなる。


「……離して」

「俺と話し合う気あるなら」

「わかった。わかったから……」


あたしがそう言うなり、ぱっと手を離した真咲。

話し合うのはいいけど、この教室で――っていうのだけは勘弁。


あたしは真咲の顔を睨んで、ぼそりと言った。


「どっか……外行こ。この学校の生徒と会わなくて済むトコ」


< 15 / 211 >

この作品をシェア

pagetop