コドモ以上、オトナ未満。
「――よ、来てやったぞ」
ココが席を外している間に俺の前に現れたのは、学ラン姿に明るい色の髪が映える賢人だ。
……お、いいところに。
客寄せ、コイツにやってもらおう。
なんて、腹黒いことを考えつつ、受付の席を立つ。
「お前、引っ越すんだって? 編集部の人に聞いてびっくりした。モデルの契約も切ったっていうし、どっか遠いとこ行くわけ?」
「……カニと流氷とじゃがいもとラベンダーとラーメンが有名な……雪が降るとこ」
「おお、北海道か。俺らのガッコ、先月修学旅行で行ったわ。時計台って意外とちっちゃかった―――――じゃなくて! お前それ、マジで言ってんの?」
……長げぇノリツッコミだな。
思わず笑みの漏れてしまった俺に、賢人は怒ったような調子で詰め寄る。
「……ココちゃんは?」
「そりゃ知ってるよ、もちろん。だからもう別れたし」
「はぁ!?」
わけが分からない、と言いたげに俺をにらんだ賢人。
客寄せどころか険悪なムードが流れ始めた俺らの周りに、野次馬っぽい奴らが集まってくる。
「俺は、そんな中途半端なことして彼女泣かせる奴のために身ぃ引いたんじゃねーぞ」
「……泣いてなかったよココは。友達に戻ろうって言ったら、“わかった”って」
もちろん、ココはいろんなこと我慢して、そう言ってくれたんだと思うけど。
でも、“我慢できる程度の気持ち”だったのかと少し寂しく感じる自分もいた。
意外にすんなり受け入れてくれたことに、ちょっと傷つきもした。
「……お前は正真正銘のバカだな」