コドモ以上、オトナ未満。
吐き捨てるように言った賢人が、俺にくるりと背を向ける。
「……もう帰んのか?」
「ちげーよ。ココちゃんに会ってくる。どこにいるのか教えろ」
「たぶん……美術室。そこにいなければ、俺は知らない」
思ったことを言っただけのに、賢人は俺に聞こえるように舌打ちをすると、大股でこの場を離れて行く。
……なんで賢人に怒られなきゃなんないんだよ。
つーかアイツは俺をいつも馬鹿にしすぎだろ。
俺だって、真剣に悩んで出した答えなんだ。
別れは、ツラくない方がいいに決まってるだろ……
「あれ? 真咲くん、一人ですか?」
相変わらず受付の席にいる俺の姿を見て、首を傾げたのは恩田先生。
その手には、色んなクラスをまわって手に入れたのであろう食べ物やがらくたがいっぱい。
首には、ハワイにでも行って来たかのような花のネックレスがぶら下がっている。
……なんか、生徒より学祭満喫してね?
「一人でもなんとかなってますよ」
「いやでも、朝からずっとですよね? 僕が代わりますから、真咲くんも好きなところを見に行ってください」
「いや、俺は……」
そう言われても、別にこのクラスの展示がうまくいくかどうかを見届けるだけで満足だと思っていたから、特に行きたいところはない。
「真咲くん」
そんな俺に、先生が自分の首から取った花の輪っかを無理矢理つけさせて、こう言う。
「今日で最後ですから。……悔いのない一日にしてください」