コドモ以上、オトナ未満。
うつむきながら言う、ココの表情は見えない。
でも、長いストレートヘアからちょっとだけ覗いた耳が、ほんのり赤く染まってるのが見えて。
「ダメ……じゃ、ない、けど」
俺の口は、勝手にそう動いていた。
ココは緊張していたのか、ふう、と深く息を吐き出すと、こんなことを言った。
「あたし……ちゃんと、“友達”やるから。真咲を困らせるようなこと、言ったりしないから。だから……っ」
「……ストップ。いいよ、わかった。つーかそれ以上言わないで」
“困らせるようなこと言わない”――って。
今日に限ってそんなこと言われるのが、いちばん困るって。
……俺、夜にはもう飛行機乗るんだから。
ココの隣には、いれなくなるんだから。
「……ゴメン」
少ししゅんとしてしまったココ。
そういうのも、困るんだけどな……
切ない思いを振り切るようにして彼女の手を握り直し、俺は聞く。
「どこ行く? 食べ物系?」
「……うん。お腹空いたかも」
「よし。じゃあ適当にいい匂いのするとこ探して――」
「ねえ真咲。……さっきから気になってたけど、その花なに?」
不思議そうに言って、俺の首元を指さすココ。
「俺もよくわかんないけど……浮かれた恩田先生にもらった」
ネックレスの花を引っ張りながら言うと、クスッと笑ったココ。
……カッコ悪いけど、つけたままでいっか。
先生みたく、浮かれ気分になれそうだし。