コドモ以上、オトナ未満。


「……そろそろ、戻んないと」

「だな。先生にずっと仕事させるわけにいかないし」


いちおう、友達ラインは飛び越えないように注意しながら過ごした、久しぶりの二人きりの時間。

最後の方は歩きまわるのをやめて、人気のない廊下の隅で並び、まったり座り込んでいた。



「……ありがとね。真咲」



細い脚を床に投げ出して座るココが、ふいに俺の方を見て言った。


「何言ってんの急に」

「急も何も、いま言わなきゃいなくなっちゃうでしょ」

「あ、そっか」


はは、と笑いつつ、そんな自分がちょっとしらじらしかった。

こういうしんみりした感じ、ちょっとヤバい。

なんか、自分が数時間後には飛行機乗って、この場所から離れようとしてるなんて、信じらんねーっつーか……


「……真咲は、あっちでもモテるんだろうね」

「え? ……んなことないっしょ。もうモデルもやめたし」

「そうじゃなくて……見た目のことだけじゃなくてさ」


まっすぐ前を向いたまま、そう言ったココ。

俺はそんな彼女の横顔を、今さらキレイだなんて思いながら、次の言葉を待った。


「……やさしーから、真咲」


……俺が、優しい?

どこがだよ。

ココのこといっぱい傷つけて、遠くに去ろうとしてる俺のどこが。



< 167 / 211 >

この作品をシェア

pagetop