コドモ以上、オトナ未満。
「……そろそろ、戻んないと」
「だな。先生にずっと仕事させるわけにいかないし」
いちおう、友達ラインは飛び越えないように注意しながら過ごした、久しぶりの二人きりの時間。
最後の方は歩きまわるのをやめて、人気のない廊下の隅で並び、まったり座り込んでいた。
「……ありがとね。真咲」
細い脚を床に投げ出して座るココが、ふいに俺の方を見て言った。
「何言ってんの急に」
「急も何も、いま言わなきゃいなくなっちゃうでしょ」
「あ、そっか」
はは、と笑いつつ、そんな自分がちょっとしらじらしかった。
こういうしんみりした感じ、ちょっとヤバい。
なんか、自分が数時間後には飛行機乗って、この場所から離れようとしてるなんて、信じらんねーっつーか……
「……真咲は、あっちでもモテるんだろうね」
「え? ……んなことないっしょ。もうモデルもやめたし」
「そうじゃなくて……見た目のことだけじゃなくてさ」
まっすぐ前を向いたまま、そう言ったココ。
俺はそんな彼女の横顔を、今さらキレイだなんて思いながら、次の言葉を待った。
「……やさしーから、真咲」
……俺が、優しい?
どこがだよ。
ココのこといっぱい傷つけて、遠くに去ろうとしてる俺のどこが。