コドモ以上、オトナ未満。
「……いーよ、最後だからって無理矢理褒めてくんなくても」
笑い飛ばして冗談にしようとしたのに、ココは笑ってくれなくて、むしろ真剣で。
「ホントだよ。……あたし、真咲がいてくれて、よかったよ」
学園祭の最中だと言うのに俺らのいる場所は静かで、ココの声だけが周りの空気を震わせて、俺の心に届く。
思わず彼女を抱きしめてしまいたい衝動に駆られるけれど、そんなことしたら一生離せなくなりそうで、ココを忘れられなくなりそうで。
……俺の手は結局廊下の床に突いたまま。
「ココは……賢人にまた言い寄られるかもな」
自分がココをどう思っていたのかも、濁す俺は卑怯者。
わざと話題を変えて、自分の気持ちから目をそらす。
「大森に……さっき、会ったよ」
「あ、会えたんだ。……俺の悪口言ってなかった?」
「言ってた」
「だよなー。アイツ、俺のことキライみたいだから」
「……でも、いいやつだよ」
そう言ったココが賢人をかばったような気がして、それにちょっと苛立つ自分がいた。
思わずココをじっと見ると、彼女も俺を見つめ返して言った。
「大森が、言ってくれたんだ。……“あんまり深く考えずに、今日は心矢と楽しめばいい”って。……だから、あたし……今日は真咲と一緒に過ごそうって思えたの」
賢人のやつ……余計なことを、と言いたいところだけど。
今日ココと過ごした時間を振り返ってみれば、“余計なこと”なんてひとつもない。
アイツの言うことはいつも正しいんだ。悔しいけど。