コドモ以上、オトナ未満。
「……戻ろっか。教室」
気持ちを切り替えるように、そう言って立ち上がったココ。
大事なことは何ひとつ言おうとしない俺に、いい加減痺れを切らしたのかもしれない。
「……だな」
俺もゆっくり立ち上がってココの隣に並んだけど、彼女はもう俺の手を握ったりしなかった。
これで、二人の時間は終わり。
そう言われているような気がした。
*
教室に戻ると、恩田先生一人でもだいぶ集客できたらしく、受付のノートにはたくさんの名前が書き連ねてあった。
それに感心していると、ほどなくして学祭の一般公開終了の放送が流れて、校内にあふれていた人が徐々に減り、生徒たちも片づけの体勢に入った。
俺らのクラスも例外じゃなく、教室を片づけるために、男子一同で壁画を一時的に空き教室に移動させた。
その作業が完了し、ぞろぞろと空き教室から出て行くクラスメイトたちの最後尾についていた俺だけど……
最後にもう一度その絵をじっくり見ておきたくて、ひとり空き教室にとどまった。
これからホームルームがあって、後夜祭もあるみたいだけど、俺はそれには参加せず、車で迎えに来る予定に母とすぐ空港に向かう手はずになっている。
だから……本当にもう、最後なんだ。
そう思うと感傷的になって、この絵を眺めたくなったのだ。