コドモ以上、オトナ未満。
「用ならあるよ……だから、もうちょっと待ってて」
スマホを耳に当てたまま、変わらずココの姿を探し続ける俺。
おかしいな……なんでいないんだ。
次第に焦ってきた俺に対し、電話の向こうの母親は呆れたように言った。
『五分よ。それ以上は無理。空港までの道が混んでいるらしいの』
「五分って……」
ちょっと待てよ。あまりに短すぎるだろ……
「――――心矢!」
そんなとき、賢人が俺のカバンを持って、こちらに走って来た。
俺は電話を切り、賢人の方に向き直るとカバンを受けとりながら言う。
「……ココがいない」
「マジかよ……教室にもいなかったぞ。よし、俺も協力するから手分けして――」
賢人がそう言った瞬間、背後からぬっと顔を出した人物。
そいつは賢人の肩をつかむとこう言った。
「……他校の生徒がなんで今ここにいるんだ。早く帰りなさい」
それは、厳しいことで有名な生徒指導の教師。
ま、賢人の存在はバレて当然と言えば当然か……
ここまで協力してくれただけでも、ありがたかった。
「賢人……あとは自分でやるから。サンキュな」
「……今度は中途半端な真似すんなよ」
そう言い残すと、賢人はおとなしく、先生に連行されていった。