コドモ以上、オトナ未満。
案の定それは母からの電話で、口やかましく「早く出て来なさい」と言われるのがわかっていたから、スマホを耳から少し離して適当に相槌をうった。
だけど、もう本当に、行かなきゃ……
重い足取りで靴箱に向かった俺は、そこに着くと自分の名前が書かれたシールをはがして、ポケットに突っ込んだ。
これで……真咲心矢は、もういない。
昇降口を降りて校門に向かってしばらく歩いたところで、ジャリ、とスニーカーの靴底を鳴らして俺は立ち止まった。
そうしてくるりと振り返り、通い慣れた校舎を目に焼き付けるように見つめる。
「じゃーな……ココ」
そう呟いてから、また校門の方に歩き出そうとして……でも、何かが引っ掛かって、俺はもう一度校舎の方を振り返った。
今、非常階段に誰かがいたような……
じっと目を凝らすと、両手で手すりを握りしめてこちらを見つめる女子の姿。
あれは――――
「――ココ!」
俺は彼女のいる階段の真下まで全速力で駆けて行った。
また携帯が震え始めたけど、それは完全に無視して。
ココが壁画の端に残してくれた、彼女の本音――
“遠くにいかないでよ、真咲”
それに、ちゃんと返事をしなきゃ――――。