コドモ以上、オトナ未満。


面と向かって、サヨナラなんて……絶対できないもん。

手すりをつかむ自分の手にコツンとおでこをぶつけて、あたしは深いため息を吐き出す。


そのまましばらく風に吹かれていると、校舎から一人の男子が出てきたのが見えて、あたしの脈が激しく乱れた。


「ま、さき……」


最後に見られるのが、こんな小さな後ろ姿だなんて……

遠くからこっそり見送ろうと決めたのは自分なのに、切なくて胸が苦しくなる。


真咲が、いっちゃう……


その姿を目で追っているとじわりと涙が滲んで、それを制服の袖でごしごしと拭って顔を上げたとき。

ドキン、と心臓が大きく波打ち、あたしは反射的に今いる場所から一歩後ろに下がった。

……視線の先の真咲がなぜか、こちら側を振り返って立っていたから。


「気づいて、ないよね……」


ドキドキと速いテンポを刻む胸を押さえ、見ない方がいいかな……と思いながらも真咲から目をそらせない。

たぶん、校舎を見てるだけだよね……最後だから、よく覚えとこう、みたいな。


しばらくするとそれを裏付けるように、真咲がまたこちらに背を向けた。

あたしは少しほっとしつつも、思わず手すりの棒をつかんで身を乗り出してしまった。

やだ……いっちゃやだよ、真咲……

口に出せない気持ちが体を突きやぶりそうなほど大きくなって、ぎゅっと目を閉じたときだった。



「――ココ!」



心の声が届いたかのように、真咲の声があたしの名を呼んだ。

しかも、こっちに向かって走ってくる。


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