コドモ以上、オトナ未満。
「待ってるよ……ずっと、待ってる!」
泣きながらこくこく頷き、あたしはそう叫んだ。
「ありがと……ココ。必ず、迎えに行くから」
真咲はそう言っていつものような優しい笑みを浮かべると、スマホで時間を見て残念そうに言う。
「……ごめん。もう、行かなきゃ」
「そっか……気をつけてね。風邪ひかないでね」
「ココは、クラスのみんなと仲良くな」
「うん……わかった。たぶん」
「たぶんかよ」
ははっと笑った真咲は、最後に目を細めてあたしを見つめると、静かに「じゃあな」と言った。
そして今度こそあたしに背中を向けて、学校をあとにした。
……ありがとう、真咲。
いつもあたしと一緒に、悩んでくれて。
素直になることの大切さを教えてくれて。
あたしに、初めての“恋”を教えてくれて。
いつか真咲が迎えに来てくれるそのときには、あたしたち、もうちょっと、オトナになっているのかな――――。
そんなことを考えながら、非常階段から眺めた景色。
いつの間にか傾いていた太陽が、あたしたちの描いた壁画の中とよく似たオレンジ色に、街を染めていた。