コドモ以上、オトナ未満。
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Honeyのココ -side 心矢-
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――ココとの別れから、八年。
春の日差しの差し込む病室で、俺は女の子のおなかに聴診器をあてていた。
「――よし。心臓の音も元気。もうすぐお家に帰れるよ」
「ホント!?」
「うん。手術も頑張ったし、えらかったもんなー沙耶ちゃん」
俺はそう言って、患者の女の子、小学一年生の沙耶ちゃんの頭を撫でた。
ふふ、とうれしそうに笑う彼女につられて、こっちも自然と笑顔になる。
「でも、先生と会えなくなるのはやだなー……」
ベッドに座ってもまだ床に届かない足をばたつかせながら、彼女がそう言って口を尖らせた。
女の子って、ませてるよなー。
この年で、男に対してこういう仕草できるなんてさ。
研修医としてここの小児科で働き始めてもうすぐひと月。
触れ合う子供たちはこんな風に可愛かったり生意気だったりやんちゃだったり……病気とは思えないほどパワーがみなぎってて、彼らと接していると飽きることがない。
「ねえ、真咲せんせ。沙耶が大きくなったら、結婚してくれる?」
「……えーと。沙耶ちゃん。それはゴメン」
「なんで? 先生、好きな人いるの?」
興味津々で聞いてくる沙耶ちゃんに、俺は人差し指を口元に立てて見せ、小さな声で言う。
「……他のみんなには言わないでくれる?」
「うん!」
大きく頷く沙耶ちゃんの耳元にかがんで、俺はこうささやいた。
「――あのね。Honeyって雑誌に出てる、モデルの、ココ」