コドモ以上、オトナ未満。
そしてにこっと微笑んだら、沙耶ちゃんの方はなぜか不満顔。
「……先生、芸能人はナシだよ。ココちゃんはかわいいから、沙耶もスキだけどさー」
「でしょ? 俺、こないだ発売された写真集も買っちゃったんだー。でね、これ見て!」
白衣のポケットを探って、俺は一枚の小さな紙を沙耶ちゃんに見せた。
「わー、先生すごい! ココちゃんに会えるの?」
「そうなんだよ。俺、告白しちゃおっかなー」
「……うーん。いくら真咲先生がカッコよくても、ココちゃんは無理だと思う」
……おいおい、沙耶ちゃん。
キミは、俺と結婚したかったんじゃなかったのか?
女子がシビアなのって、オトナもコドモも関係ないんだなー、なんて苦笑しながら、俺は沙耶ちゃんの病室をあとにした。
「――あ、真咲先生!」
廊下に出た俺を呼びとめたのは、新人看護師の夏川さん。
いまだに女子大生みたいなノリで、仕事に関係ない話ばかりいつも持ちかけてくる、ちょっと困った同僚だ。
「なんですか?」
「あの! 金曜日なんですけど、研修医のみなさんと看護師一同で、親睦を深める会をやりたいなーなんて」
「あ、金曜日は……ゴメンナサイ、俺、用事あって」
そこで俺は、さっき沙耶ちゃんにも見せた魔法のチケットをスッと夏川さんの目の前にかざした。