コドモ以上、オトナ未満。
仕事を終えた俺が帰るのは、家族で住んでたあの家でなく、新しく借りたアパート。
その狭い部屋の電気を点けると、足の踏み場がないくらいに散らばっているのは、女性向けファッション雑誌“Honey”だ。
その中で、ココがカバーガールをつとめている一冊を手に取り、しばらく眺めてはにやけ、それから中でいろんな服を着るココを見て、またにやける。
……俺って、マジでおたくかも。
ココが本気でモデルを目指すことにしたのは、高校三年の頃。
最初はあのおせっかい賢人の強い勧めで、半信半疑だったらしいけど……
実際モデルとしての活動を始めたココは、水を得た魚のようだった。
一気に人気モデルにのしあがって、雑誌の販売部数を伸ばすことにも貢献したらしいココは、先月単独写真集【Queen Bee】を発売。
発売日にすぐそれを買ったら、運よく握手会のチケットが入っている一冊だった。
「金曜、俺が行ったらびっくりするかな……女王蜂さん」
ココとはときどき連絡を取り合っていたけど、この八年一度も会っていない。
ココは仕事が忙しかったし、俺の方もやっぱ医者になるのって、簡単なもんじゃなくて。
こっちに帰ってきたという報告はしてあったけど、“今度ゆっくり会おう”くらいの約束しかしていない。
それでもココは俺を待ってる……そう確証を持てたのは、写真集の中に、こんなインタビューがあったからだ。