コドモ以上、オトナ未満。
……俺は、むしろ最後の方がいいな。
おしゃれな十代くらいの女子や、頭に「ココ命」と書かれたハチマキを巻いたオジサンを横目に見ながら、俺はゆっくりと列の後方へとつく。
そのとき、俺と同じように後ろの方へとまわってきたらしい女性がドン、と体にぶつかってきた。
「あ……ごめんなさい! よく見てなくて」
「いえ……全然へーきで、す……」
その女性が顔を上げると、俺は一瞬ドキッとした。
歳は自分の母親世代かなって感じなんだけど、背格好や吊り上がってる目がココによく似ていて……
「……なにか?」
「……! あ、いえ。よかったら、前どうぞ」
「ありがとう」
一度“似てる”と思ってしまったからか、ニコッと微笑んだ顔もココと重なって、俺は内心動揺した。
俺、どんだけココ不足なんだよ……
本人じゃない、ただの似てる人――しかもオバサンにどぎまぎするって、もう末期だろ……
そんな自分に呆れつつも、俺は気持ちを落ち着かせるために首元のネックレスに触れながら、熱気に包まれた会場内で握手会が始まるのを待った。