コドモ以上、オトナ未満。
ありがとう
【Queen Bee】
――初めての写真集のタイトルは、あたしの強い希望でそうなった。
昔、クラスでそう呼ばれていたことを恨んでいるわけじゃないけど、当時あたしの悪口を言っていた奴らに、“本当の女王蜂になってやったわよ”って、見せつけたくて。
モデルをするようになってから、あたしのキツイ目元は“クール”だと褒められ、学校では目立つからいやだった身長の高さも、この世界に入っちゃえばごく平均的なものだった。
「……うーん、いいねぇ。俺はこのページのココちゃんが好きだな」
あたしをモデルの世界に引っ張り込んだ張本人、大森賢人が控室のパイプ椅子に足を組んで座り、写真集をめくっている。
大森とは事務所が同じで、今日は暇だからと、あたしの握手会の雑用をしてくれることになったのだ。
……といっても、ここに入り浸って雑談してるばっかりだけど。
「どれ?」
「これこれ。ココちゃんにしては珍しく、カメラ睨んでないやつ」
「あー……これね」
腰を浮かせてそのページを見たあたしは、急に恥ずかしくなって身を引いた。
大森が見ていたのは、あたしが一本のガーベラを手にして、物憂げにまつ毛を伏せているアップの一枚。
カメラマンの人に、“好きな人のことを思い浮かべて”――って言われて撮ったやつだ。
「すげー乙女な表情だよな」
「…………そう?」
「あ、わかった。俺のこと想像したんだろ。ココちゃんってば素直じゃない――」
「違うから」