コドモ以上、オトナ未満。
「――じゃあ俺ら帰るから。ごちそうさま、京香さん」
「いーえ。ココちゃん、一人でもまた来てね?」
「……はい」
お店の開店時間が迫ると、あたしたちは京香さんに別れを告げ、さっきよりも薄暗くなった街に出た。
「……送ってくよ。ココのうち、どこ?」
「いいよ。まだ真っ暗ってわけでもないし、一人で帰れる」
「ダメ。女の子なんだから、危ないよ」
先を歩こうとしたあたしの手を、真咲がつかむ。
振り向くと、大きな体に似合わず頼りない表情をした真咲が、こう言った。
「……ってのは建前で。ホントはさ、さっきも言ったけど、あんま家に早く帰りたくないから……送らせてほしいっていうか」
それを聞いたら、なんだか真咲が迷子になった子供みたいに見えてきて……
あたしはその手を振り払うことができなくなってしまった。
「……いいけど。時間つぶし、できないくらい近いよ?」
「そっか。じゃあ、ゆっくり歩く」
「……そういう問題?」
真咲はあたしの問いにふっと微笑むと、隣に並んであたしを引き留めるためにつかんでいた手をしっかりと握り直した。
付き合ってるわけでもないのに、手を繋ぐのって、変なのかもしれないけど。
別に不快ではなかったし、何より真咲が心細そうに見えたから……
「ちっちゃ、ココの手」
「……アンタのが無駄にデカいだけだよ」
空に一番星の輝く、夜の入り口、オトナの時間の始まりかけた街。
そこからはじき出されたコドモのあたしたちは、帰るべき場所に帰ることしかできないんだ。