コドモ以上、オトナ未満。


……お父さん。

確かにあたしに対しても、ちょっと執着めいたことを言ったり、必要ないものを買い与えたりしてた時期もあった。

でも……あたしたちは、ちゃんとそれを乗り超えた。

お母さんみたいに、逃げなかった。


「だからね、湖々にも同じようなことをしていないかって、ずっと気がかりで――」

「お父さんのこと悪く言わないで!」


突然声を荒げたあたしに、お母さんはびくりと肩を震わせて目を見開いた。

あたしは、怒りで震える声をなんとか押さえながら言う。


「お父さんは、あたしのことですごく悩んでくれた。悩み過ぎて、体を壊したこともあった。だけど、二人でちゃんと話をして、今はいい関係を築けてるの」


お父さんは、不器用なだけ……

本当は優しい人だし、たまに意見が食い違っても、話せばわかってくれる。


「あたしは、お母さんがいない代わりに、お父さんと、それから友達とか仕事仲間とか……いろんな人に支えられて、ここまで成長できたの。
……その人たちを悪く言うのは、いくらお母さんでも許せない」

「湖々……」


あたしたちの間に、気まずい沈黙が流れた。

握手会の他のスタッフたちは、親切からなのか、好奇心からなのか、あたしたちのやり取りをただ見守っている。


……そういえば、最後の一人の参加者さんは、すごいいたたまれないだろうな。

いきなりこんな空気になっちゃって、もう握手どころじゃないかな……

うつむいて唇を噛みながら、あたしがそんなことを思っていると。

ふいにすぐ近くから、ぱちぱちと手を叩く音が聞こえた。

なんで、ここで拍手……?


不思議に思ったあたしが、顔を上げると――



「――さっすがココ。カッコよかったよ、今の」



< 195 / 211 >

この作品をシェア

pagetop