コドモ以上、オトナ未満。
……お父さん。
確かにあたしに対しても、ちょっと執着めいたことを言ったり、必要ないものを買い与えたりしてた時期もあった。
でも……あたしたちは、ちゃんとそれを乗り超えた。
お母さんみたいに、逃げなかった。
「だからね、湖々にも同じようなことをしていないかって、ずっと気がかりで――」
「お父さんのこと悪く言わないで!」
突然声を荒げたあたしに、お母さんはびくりと肩を震わせて目を見開いた。
あたしは、怒りで震える声をなんとか押さえながら言う。
「お父さんは、あたしのことですごく悩んでくれた。悩み過ぎて、体を壊したこともあった。だけど、二人でちゃんと話をして、今はいい関係を築けてるの」
お父さんは、不器用なだけ……
本当は優しい人だし、たまに意見が食い違っても、話せばわかってくれる。
「あたしは、お母さんがいない代わりに、お父さんと、それから友達とか仕事仲間とか……いろんな人に支えられて、ここまで成長できたの。
……その人たちを悪く言うのは、いくらお母さんでも許せない」
「湖々……」
あたしたちの間に、気まずい沈黙が流れた。
握手会の他のスタッフたちは、親切からなのか、好奇心からなのか、あたしたちのやり取りをただ見守っている。
……そういえば、最後の一人の参加者さんは、すごいいたたまれないだろうな。
いきなりこんな空気になっちゃって、もう握手どころじゃないかな……
うつむいて唇を噛みながら、あたしがそんなことを思っていると。
ふいにすぐ近くから、ぱちぱちと手を叩く音が聞こえた。
なんで、ここで拍手……?
不思議に思ったあたしが、顔を上げると――
「――さっすがココ。カッコよかったよ、今の」